お話を書くにも、絵を描くにも、トレーニングが必要です
スポーツ選手は試合にそなえて、トレーニングをします。マラソンの選手なら、持久力をつけるために、毎日のように長い距離を走ったり。100mの選手なら、瞬発力の強化でダッシュを繰り返したり、日々の努力をしています。
絵本をかくにも、トレーニングが必要です。お話を書くには文章のトレーニングが、絵を描くには美術を知るトレーニングが必要です。
とは言え、トレーニングは、楽しいものもありますが、単調な反復練習もあります。では、どんなトレーニングが必要でしょうか?
人はそれぞれ、得手、不得手があります。自分にあった文や絵のトレーニング法を見つけないと身に付きません。いろいろ試しながら、自分にあうものを探していくしかありませんね。こうして見つけたトレーニングが、あなたの絵本を個性的にしていくことでしょう。
落語の「寿限無」
では、トレーニングはどんなことをすればいいのでしょうか。
落語家のお弟子さんが、初めに練習させられるのが「寿限無(ジュゲム)」です。お弟子さんは、この話を声を出して言いながら、覚えます。「寿限無(じゅげむ) 寿限無 五劫(ごこう)の擦り切れ(すりきれ)…」と続いていく寿限無ですが、これは落語家になるためには、とてもいいトレーニングです。
何がいいのかというと、一つ目は、話をひとつでも「完全に覚える」と自信になります。
二つ目は早口言葉のような内容を「声をだしていう」ことで、滑舌がよくなります。
三つ目は、話すのが商売の落語家さんが、寿限無の話のおもしさを理解して、「自分なりに話に抑揚をつけられる」ようになります。それが、お客さんの笑いを引き出すことにつながります。
なんて、寿限無はすてきなんでしょう。
「寿限無 寿限無 五劫の擦り切れ…」は子供に付けた長い名前です。元気で長生きするように、無限や無数を意味する言葉や、縁起のいい言葉が並べられています。子を思う親の気持ちがあふれた話です。
絵本にはどんなトレーニングがいいのでしょうか
文(お話)のトレーニングは文をかくことです。はじめは短い文をたくさんかきましょう。ですが短い作文をかくのではありません。
「私は郵便局で切手を買い、封筒にはってポストに投函した。実家に早く着くようにと願った」
こんな文をたくさんかいてもトレーニングにはなりません。不思議な文にしてみましょう。
「私は郵便局で切手を買い、洋服にはってポストに忍び込んだ。実家に早く届けてと願った」
今度は絵のトレーニングについて、スケッチをしたりもいいのですが、絵本の絵のためには、まず文を書いてそれを絵にしましょう。
「花壇には白や黄色の花がいっぱい咲いている。おやおや、赤い花がひとつ、堂々と咲いている」
文に合う絵を描くトレーニングをしましょう。